相変わらずのあいつの部屋は、昔に比べて少し洗練された空間になっていた。
5年前と違うのは、一際大きなベッドが置かれている事。
類の部屋にあったベッドより大きな、特注であろうベッドが存在感を主張している。
「蓮坊ちゃまのお部屋もございます。」
メイドさんに案内されて2つ隣の部屋に行けば、この邸の外観からは想像もできないようなポップな空間。
まるで幼稚園の一室かのような造り。
大きな窓に、黒板!?
たくさんの絵本に、おもちゃ。
奥の方にはベッドもあり、まだ扉が3つもあるからきっとバスルームとトイレにクローゼット…
こんな小さい子にまだ早い!
と思いつつも、蓮への愛情だと思うと嬉しくなる。
「こちらは大奥様のご指示で作られたお部屋ですよ。」
『へ?道明寺・・・司ではなく?』
「はい。あの事件があった翌日にはもう工事が着工されましたので、その前から設計などをされていたんだと思います。先日拝見されて、初めて微笑まれている姿を見ましたから。
あ、申し訳ありません、出過ぎた真似を…」
『気にしないでください!あたしはまだ道明寺の人間でもありませんし、以前一緒に働いていた仲じゃないですか!』
懐かしい顔に、ホッとしたのは事実。
すでに蓮は自分の部屋だと言われ、喜んで遊んでいる。
『蓮、お父さん迎えに行こう』
再び車に乗り、病院に向かった。
あたしは先生から退院後の注意点を聞き、処方された薬を持って病室に行く。
道明寺と暮らす事により、花沢物産を辞めることになった。
まぁ、独占欲強いあいつが許すわけでもなく。
それに病みあがりのあいつをサポートするという任務をお母さん直々に言われているので、この病院に籍を置き、特別看護科、というどうでもいいような名前を付けた、あたししかいない科に配属された。
要は、常にあいつに付いて薬の管理や体調に異変がないか見てろって事。
PTSDもいつ現れるか分からないので、これから心療内科の分野も少し勉強が必要かもしれない。
殺されても死なないって言われてた道明寺が、二度も生死の境をさまよった。
今度はあたしが、絶対にそんな状況にしないように守ってやらなきゃ。
あたしの決意は固いものとなった。
3人で邸に帰ってくると、タマ先輩は目尻に涙を浮かべていた。
タ「あんたがまたこの邸に帰ってくる日が来るなんてねぇ。しかも蓮坊ちゃんまでいて。」
『またここでお世話になります。蓮も』
蓮「よろしくお願いします。」
司「タマ、まだまだ棺桶に入れねぇな。」
タ「主人にはもう少し待っててもらいましょうかね。蓮坊ちゃんにご兄弟ができるまでは。」
司「きょ・・・」
顔が真っ赤になる道明寺。
『先輩!蓮の前でやめてください!』
タ「フォッフォッフォ、蓮坊ちゃんの世話はできなかったからね、次は私が世話させてもらうよ。若奥様。」
『・・・まだです。籍は入れてませんから、つくしって呼んでください。』
タ「いずれそうなるんだ。使用人たちはあんたが帰ってくるの楽しみにしてたんだよ。知ってる顔も多いだろう?」
見渡せば、昼間よりも使用人の数が多い。
7割が知っている顔。
3割は若いし、新しい人なのだろう。
『これからお世話になります。看護師やってるので、怪我とかしたら声掛けてくださいね。手当てしますので。』
「牧野様…!」
懐かしい使用人たちが、あたしに声をかけてくれる。
司「全く。こいつは俺より好かれてるよな。まぁいい。新しい女主人だ。お前ら、粗相のないようにな。それと、蓮、俺の息子だ。俺たちが家を空ける間は、絶対目を離すな。わかったな?」
「「「はい」」」
道明寺がこんな風に使用人たちに声をかけているのは初めて見たかもしれない。
いつも偉そうで、まぁ偉いんだけど。
使用人に話しかけるなんて、絶対ないと思ってた。
少しは道明寺も変わったのかな。
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