いつものように、蓮が幼稚園であった出来事を道明寺に話している時。
微かだけど、ピクリと顔が動いた。
『道明寺?道明寺!』
「おとうさん?」
ゆっくり瞼が開いた。
『道明寺、わかる?あたしがわかる?』
司「ま・・・き・の・・・」
蓮「おとうさん!」
司「れ・・・ん・・・」
ナースコールを押すと、バタバタと廊下が騒がしくなる。
先生と看護師が病室に来て、道明寺の診察が始まった。
3週間点滴だけで栄養を取って、食事も水分も口にしていない道明寺は声が掠れていた。
これも、ゆっくり食事が取れるようになれば治る事。
『良かった。道明寺が目を覚ましてくれて。3週間よ?どれだけ心配させれば気が済むのかしら。本当に、あの時は守ってくれてありがとう。あたしの事忘れてたらどうしようって思ってたんだよ。』
あまり話す事が出来ない道明寺は、あたしの話に耳を傾けていた。
すると、震えながら手を上げる。
その手を支えると、あたしの頬を撫でた。
司「お前らが、無事で、よかった。蓮を、産んでくれて、ありがとう」
あたしが勝手にした事なのに。
そんな掠れた声でありがとうだなんて。
涙が溢れて止まらなかった。
司「蓮、本当に、いい子に、育ったな。お父さんは、嬉しいぞ。」
蓮「ぼくね、おとうさんとあえてうれしかったんだ。パパとおとうさんはちがうんだね。」
蓮の言葉に反応を見せない道明寺。
きっと、意味がわかっていないからだ。
『類と総二郎、あきらはパパって呼ばれてるの。でもあんたはお父さん。あたしはお母さん。これで意味がわかる?』
司「あぁ。」
『少し休んで。道明寺のお母さん来るから、来たら起こしてあげるね。』
司「手…」
『ずっと握ってる。側にいるから。』
安心したように眠りに就いた。
それから2時間くらい経っただろうか。
ノックをする音がして、返事をすると会長が入ってきた。
楓「看病お疲れ様。司の目が覚めたと聞きました。今はどう?」
『はい、まだ少し意識ははっきりとはしてませんが、先生の所見によるともう大丈夫だそうです。今は眠ってます。』
楓「起こしても大丈夫かしら?時間がないの。」
『今起こしますね。道明寺?お母さん来たよ?起きて?』
うっすらと目を開けた道明寺。
『起きれる?眠い?お母さん時間ないんだって。話聞ける?』
司「大丈夫だ」
楓「返事はいいから、私の話を聞きなさい。
まず、あなたの離婚が成立しました。離婚協議中の出来事として、向こうから慰謝料の支払いを申し出てきたので受け取っておきます。これはあなたの個人資産ですので、好きにするといいわ。
麗さんですが、蓮くんの誘拐の首謀、並びに司への傷害罪で起訴される事が決まりました。今は警察の管轄下の病院に入院しています。家族間での出来事なので、略式起訴となり罰金だけで済みそうです。
一日でも早く回復して、蓮くんに父親らしいところを見せなさい。あなたの再婚には、口を出すつもりもございません。司のプライベートは、自分で決める事。いいですね?」
司「あぁ。」
楓「牧野さん。あなたさえ良ければ、このまま司の側で蓮くんとともに暮らせないかしら。」
『え?そんな急に…』
楓「そのまま司も聞きなさい。
後遺症が残ると聞きました。それよりも一番恐ろしいのはPTSDです。2度も同じような体験をあなたとしているの。乗り越えるのも、あなたとではないかしら。
私は牧野さんを妻として、司の側にいてほしいと思っています。看護師資格を持つあなたがいてくれるだけで心強いわ。
勘違いしないように言っておきますが、看護師だからあなたがいいわけではありません。牧野つくしだから、あなたがいいんです。司が退院するまでに考えておいてください。
では、失礼するわ。」
SPを引き連れて、颯爽と帰って行った会長。
いや、でもね、道明寺と一緒に住めって・・・
いきなりすぎるでしょ。
道明寺の顔を見れば、にたりと笑っている。
『何よ』
「ずっと、一緒に、いてくれないか?蓮と一緒に」
『少し考えさせて。知ってるんでしょ?類と一緒に住んでる事も。あんたの希望に添えるかわかんないけど、考えてみる。もちろん、蓮の気持ちが最優先だからね。』
軽く頷き、道明寺は再び目を閉じた。
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