あたしはよく待っていられたなと思う。
幼かったあたしたちのジェットコースターのような激しい恋は、今も進行中。
この4年で会えたのは3回。
最後の電話もいつだったか覚えていないくらい前の事。
あいつの帰国だって週刊誌が教えてくれた。
イイ男になって帰ってきたら幸せにしてあげると言ったけど、本当に出来るのだろうか。
口約束だけの婚約者は、もうすぐ帰ってくる。
F3に散々説得されたけど、あたしは英徳大学には進学しなかった。
もう授業料で悩みたくない。
相変わらず風呂なしアパートに4人で住んでるのに。
あたしは都内のそれなりに大きい総合病院付属の看護学校に奨学金で通った。
卒業後、3年働けば返済不要。
あたしにはもってこいの制度。
生活費と少しの必要経費だけを稼ぐだけのバイトは、高校時代に比べるとかなり楽だった。
勉強や実習も真面目にやって、首席で卒業した。
そのまま総合病院に勤務する事が決まっている。
卒業から1週間。
去年両親は進を連れて地方に引っ越したから、1人暮らしの小さなアパートで束の間の春休み。
と言いたいところだけど、目の前には4年待った恋人の姿。
「お前、何で空港に迎えに来なかった?」
『行けるわけないでしょ?あんなにマスコミがいたんじゃ、目立つじゃない』
「俺が帰ってくるのが嬉しくないのか?」
『・・・嬉しいよ。ずっと待ってたんだか、』
言い終わらないうちに抱きしめられた。
久しぶりのこの香り。
広い胸、あたしを抱きしめる強い腕。
帰ってきたんだ。
触れたくて仕方なかった人が目の前にいるんだ。
『会いたかったよ、道明寺』
「あぁ、俺もだ。」
体を離せば降ってくるキスの嵐。
その後は自然の流れのように、あたしの狭いシングルベットに押し倒された。
翌朝、道明寺の携帯が鳴った音で起こされた。
何も身につけていない状態で、あたしの体には道明寺の腕が絡みついている。
『ねぇ、電話鳴ってるよ?』
「めんどくせぇ」
『仕事なんじゃないの?』
鳴りやまない電話。
痺れを切らして道明寺は起き上がり、通話ボタンを押した。
「あぁ・・・は?・・・マジかよ・・・わかった、すぐ行く。」
『仕事?』
「あぁ。本当は今日オフだったんだけどよ、トラブルで会社行かなきゃいけなくなった。悪いな。」
『仕事だもん、仕方ないよ』
タオルケットにくるまり、起き上がった。
「明日からお前も仕事だろ?」
『そうだよ』
「今度就職祝いしような。俺は日本にいる。いつでも・・・ってわけにはいかねぇけどよ、会えるんだし、電話もしてこいよ。金も時差も気にする事はない。」
『うん。』
あたしと話しながら、昨日着てきたスーツに袖を通す。
道明寺は再びベッドに座り、あたしを抱きしめた。
「仕事の時間メールしろ。いいな?」
『メンドクサイ…』
「あぁ?」
『する。するってば。病院には絶対来ないでよ?あたしは病棟なんだから、患者さんに迷惑になるんだからね。』
「チッ・・・」
『ほら、秘書さんが待ってるんじゃないの?』
「あぁ、行くよ。」
甘い甘いキスをして「またな」という言葉と、あいつの香りを残して仕事に向かった。
ということで、新連載“証”始めました。
ありがちな設定かもしれませんが、最後はね。
私らしく終わりたいなと。
私らしくって何?ってお思いでしょうが、
まぁ、事件は起きますよね…
今、The person~の番外編書いてます。
本編ではなかったお話を、ちょこちょこと。
出来上がり次第掲載します。
それまでお待ちを。
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