頭を下げて回り、個人資産まで使ったくらいだ。
この2か月で、どれだけの謝罪をしただろう。
つくしがいない生活に、まだ慣れそうにもない。
久しぶりの休日。
どこに行くわけでもなく、フラっと散歩に出た。
俺の足は自然と永林学園と向かっていた。
人と壁を作り、特定の奴としか打ち解けなかった高校時代。
目の前に敷かれたレールの上を歩きたくなくて、いつもどこか冷めていた。
インターンとしていろんな部署で働くのは楽しかった。
俺にはそれで十分だった。
絶対的な上司がいて、解り合い、競い合う仲間がいて。
年齢関係なく、信頼し合える。
その環境で働きたかった。
上に立つには相当の覚悟がいる。
この2か月で、嫌というほど思い知った。
責任が大きすぎて、俺一人で背負うには重すぎる。
「啓太?」
一台の高級車が停まり、出てきたのは滋だった。
「今日は休み?」
「あぁ。少し落ち着いたからな。」
「そっか。大変だったね。」
「司のおかげで、倒産だけは免れたよ。」
「啓太、大丈夫?疲れた顔してる。」
「いろんなもの失ったからな。楽しみがないんだよ。」
「そんな事言わないでよ。」
「・・・つくしと会ってるか?」
「うん。今は毎日レッスンしてる。元気にしてるよ。」
「そっか、元気にしてんのか。」
「啓太も元気出して。」
「あぁ。じゃあな」
いつも明るい滋は、今の俺には眩しかった。
眩しすぎて、まっすぐ見る事が出来なかった。
翌週。
親父から見合いすると言われた。
「とても好条件のお嬢さんだよ。お前にはもったいないくらいだ。」
どこの誰かは聞かなかった。
聞いても、俺には興味もない。
つくしじゃないんなら誰でもよかったんだ。
会場に着き、部屋に案内される。
そこには、振り袖を着た滋がいた。
啓「滋?」
滋「啓太の相手、滋ちゃんだよ~」
啓太父「同じ高校だったらしいじゃないか。」
啓「あぁ、この間も偶然会ったばかりだよ。」
目の前には滋がいて。
ニコニコして、俺を見てる。
啓太父「うちの今の状況で、大河原さんにはご迷惑な縁談じゃないかと…」
滋父「娘から頼まれましてね、啓太くんと見合いさせてくれって。うちは滋しかいませんが、滋に跡を継がせようとは思っていません。道明寺さんの時に嫌な思いさせてしまったんでね、次は滋の自由にさせようと思っていたんですよ。」
啓太父「滋さんは本当にいいのかい?」
滋「はい。啓太を救えるのは私しかいません。友人から、婚約者にしていただけますか?」
啓太父「うちとしては大歓迎だよ。啓太はどうなんだ?」
啓「滋、本当にいいのか?苦労するかもしれないぞ?というか、俺だぞ?」
滋「啓太だからいいの。啓太のお嫁さんになりたいの。ダメ?」
いつになく、弱気な滋。
こいつにも、女らしい部分があったんだ。
啓「大河原さん、僕には願ってもいないご縁談です。これからも、よろしくお願いします。」
立ち上がり、頭を下げた。
滋父「啓太くん、娘をよろしく頼むよ。」
それからは、結婚まで話は早かった。
つくしを忘れたわけではないけれど。
俺を愛して、笑顔でいてくれる滋に少しづつ惹かれているのも確かだ。
時には能天気なくらいの明るさが、俺の歩く道を照らしてくれる。
啓「式にはつくしも呼ぼうか」
滋「いいの?私は親友だから呼びたかったけど・・・」
啓「俺たちが幸せになるってところを見せてやらないと、あいつも安心できないだろ。もう俺は大丈夫だから。」
笑顔で答えてくれた滋を愛おしいと思い、その日、初めて滋を抱いた。
結婚式当日。
控室に入ってきたつくしは、ドレスアップしてキレイだった。
俺は今笑えているだろうか。
何を話せばいいのかもわからず、口から出たのは司の事。
つくしが寂しい思いをせず、充実した日々を過ごす事が出来ているみたいだから。
これで心おきなく結婚できる。
ありがとう、つくし。
愛してた。
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