・・・会長によって。
「牧野さんの成績が落ちたら、彼女に縁談を組みますよ?」
その一言は、あたしから離れようとしない司を引き離すのに絶大な効果をもたらした。
NYの邸には、道明寺財閥総帥、つまり道明寺のお父さんがいる。
まだ体調が完全に良くなっていないので、会長が総帥の仕事の半分以上を担っている。
だから、あんなに忙しいのかと納得できた。
「初めまして。司の父、道明寺崇(たかし)です。」
初めて対面した時は、驚くほかなかった。
道明寺と変わらない身長と、切れ長の瞳に筋の通った鼻、薄い唇。
クルクルパーマではなかったけど、そっくりだった。
あたしが緊張して話しても、総帥は終始にこやかに笑っている。
あたしを「つくしちゃん」と呼び、まだ婚約さえもしていないのに「お父様」って呼んで、なんて言う人。
こんな人が道明寺財閥の総帥なのかと、気が抜けた。
でも、きっとすごい人なんだってわかる。
家族の前では穏やかに笑う人だけど、醸し出す雰囲気が大財閥のトップに立つ人間なんだって思わされる。
崇「今まで家族を顧みず仕事ばっかりしてきたから罰が当たったんだ。」
自分の体調不良をそんな風に言っていた。
崇「楓がここに居候を置くって言うからどんな子かと思っていたんだ。司の彼女だったんだね。嬉しいよ。楓のサポートよろしくね。」
司があたしを見つめる時の優しい目をする・・・お父様。
本人に伝わっていなかっただけで、司は愛されていたんだと思った。
崇「楓がつくしちゃんにした事は、財閥としては仕方ない事なんだ。もし、楓より先に僕の耳に入っていたら同じ事をしていたと思うよ。でも、それを乗り越えてきたんだね。司にはつくしちゃんがいないとダメだって楓も言ってたし、つくしちゃんみたいな可愛い子だったら、僕も賛成だ。早く財閥の仕事を覚えて、一人前になるんだよ。」
『はい。頑張ります。』
会長より自宅にいる時間が長いため、あたしと顔を合わせることも多い。
なるべく食事を共にして、お父様の中の司の小さい頃の話を聞いていた。
司からは勉強の邪魔をしてはと、時々来るメール。
会社のパソコンのアドレスから来る、事務的にも思えるメールでさえ、あたしの士気を高めた。
時々邸で会う会長とは、お父様と共に食事をする。
「あなたのマナーも様になってきたわね。」
褒められて、頬が少しばかり赤くなった。
「今日は椿が娘を連れて帰ってくるわ。少しだけ、相手してあげて。」
『わかりました。』
彼氏の親と同居という、奇妙な環境。
司抜きであたしを知ってもらういい機会だし、自宅での会長は穏やかだった。
「つくしちゃーん」
会うなりいつものように抱きしめられる。
『お・・・姉さん、く、苦しい…』
「あら、ごめんねぇ、つい。私嬉しいの。やっとつくしちゃんが私の妹になるなんて」
『いや、まだ3年以上は先かと…』
「それでも、司と結婚することには間違いないんでしょ?」
『・・・はい。』
「じゃあ、もう妹よ。あ、紹介するわ。娘の栞よ」
シッターさんからお姉さんの腕に戻ってきたのは、もうすぐ8カ月だと言う女の子。
お姉さんに似て、将来美人になると確信できる。
「まだ司も会ったことないのよ。後で電話して自慢しなきゃ。」
2人でランチをしながら、大変だったわねとお姉さんは涙を流し。
あたしを思って泣いてくれるお姉さんに嬉しくなり、あたしも涙を流した。
今日は勉強できそうにもないな…
そんな事を考えるくらい、あたしの毎日は勉強漬けだった。
昨日今日とパソコンに向かう時間がないので予約投稿にしてます。
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