では、続きをどうぞ↓
テレビを見ながらウトウトしていた。
そんな時に鳴った電話。
無視しようかとも思ったけど、出なければいけない気がして自然と指が動いていた。
牧野が事故に遭って行方不明になってから、連絡を取り合えるようにとみんなで番号交換したのを覚えてる。
どこで接点を持ったかわからないけど、皐月の名前を出されてしまえば俺はいつでも飛んでいくよ。
・・・牧野の為なら、あの女もここまでするんだな。
うちから司の家まで車で15分。
「急いで司の家行って」
運転手を急かして、早く着けと願った。
門の近くに止まっている高級車。
車から降りて、窓をノックしたら皐月が顔をあげた。
運転手が降りて来てドアを開ける。
隣に座った俺に、皐月は縋るような視線を向けるとコートの裾をキュッと握った。
『私は、いらないの、かな・・・』
昨日食事に行った時は、本当に幸せそうな顔をしていたのに。
これから会える司に想いを馳せ、その笑顔を見ているだけで俺も温かい気持ちになれた。
俺たちは昔からそういう関係だったんだ。
幸せそうな牧野を、一番近くで見守るのが俺の役目なんだ。
「何があったか話せる・・・?」
コートを握る手に、俺の手を重ねた。
今俺がここにいる理由にも頭が回っていない程、ショックな事があったんだろう。
『見なかった事に、したい・・・。司の意志とは関係なくても、私以外の人とキス…なんて・・・』
・・・大河原のバカ女。
皐月を傷つけたって、司はあんたになびかないよ。
気付きなよ、そのくらい。
『司が悪くないのはわかってる。でも、会えないよ。顔を見る事が出来ない。』
「じゃあ今日はこのまま神戸まで帰ろうか。品川まで送ってくよ」
『ん・・・?これ、桜子の家の車じゃないの?』
「あ、そうだったね。もうすぐ荷物持ってくると思うよ」
『ねぇ、そういえば、何で類がいるの?桜子と知り合いなの?』
「聞いてないんだ。三条も英徳の出身だよ。高校の時から知ってる。」
『そうなんだ。でも、なんで私と類が知り合いだって知ってたのかなぁ』
「皐月は自分が目立つ存在だってわかってないんだね」
『目立つ?』
「港町で逢坂を知らない人はいないでしょ。そこの令嬢なんだから、有名企業や三条みたいな旧家の人間はみんな知って
るよ」
『そうなんだ・・・』
コンコンとドアをノックする音が聞こえる。
三条が皐月のコートとバッグを持っていた。
真ん中に皐月を挟んで乗ってるのも、変な感じ。
「皐月さん、道明寺さん後で電話するって言ってました。今日は私と一緒に食事に行きましょう。新幹線の時間までには駅
にお送りしますので」
『・・・類も、一緒でいい?』
「はい、もちろんです。花沢さんのおごりで美味しいもの食べましょう」
「・・・皐月の分だけね」
「レディに出させるなんて男の恥ですよ」
「皐月、何食べたい?俺熱燗飲みたいなぁ。」
俺と三条の会話を聞いて、フッと笑った皐月。
『ありがとう、2人とも。お父さんとたまに行く料亭があるの。そこに電話してみるね』
皐月にほんの少しでも笑顔が戻って、ホッとした。
3人での食事は、独特な雰囲気だった。
皐月を中心とした会話。
司や大河原の事は一切触れず、他愛のない事ばかりを話題にして。
『あのね、桜子。司の家に送ってくれる?』
「・・・いいですけど、ご自宅に帰られないんですか?」
『明日の始発で帰る。このまま帰ったら、後悔しそうだから。』
「わかりました。滋さんには、私からよく言っておきます。」
『類も桜子も本当にありがとう。東京にこんな素敵な友人ができるなんて思ってもいなかった。きっと2人がいなかったら、
私は・・・ここまで司を信じようって思えなかったかもしれない。』
「今回の事は滋さんが悪いんです。それだけは、忘れないでくださいね」
『うん。大丈夫。』
皐月は強くなった。
司と生きていくことを決めたからだろうか。
誰かに守られる事を嫌がっていた牧野。
でも皐月は、素直に甘える事が出来るし守られるのを嫌がらない。
それが女であると教えられ、牧野から皐月へと侵食していく。
男からすれば、この方が可愛いよ。
どんな男でも、好きな女は守ってやりたくなるんだ。
司は本当に幸せな奴だと思う。
自分が好きな女に、2度も惚れられたんだから。
こんな奇跡は、2度と起こらないだろう。
だから、皐月を泣かせるな、司。
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