メイドさんたちに「皐月お嬢様」って呼ばれるのにも慣れたし、何でもやってくれる生活にも違和感がなくなっていった。
「皐月、女の子は恋をしてキレイになるんだよ。だから、たくさん恋をして喜んで傷ついていろんな経験をするんだ。話
したい事があればいつでも話を聞くし、傷ついたら慰めてあげるから。人を好きになるのは素敵な事だよ。臆病にならず
に、積極的に。」
女子大だから男の人との出会いは少ない。
逢坂という苗字で、一族の誰かだという事は周囲にも気付かれている。
お父さんは養子縁組をした事を公表していない。
あたしが大学を卒業するまでは明かさないと言っていた。
一族というだけで、女の子でもあたしに取り入る人がいる。
繋がりを持ったって、どうなるの?
そんな人には興味がない。
ちゃんと、あたし自身と仲良くしてくれる数人と、過ごす事が多くなっていた。
「ねぇ、皐月。パーティ行かない?」
『え?パーティ?』
「そう。御崎グループの娘がバースデーパーティ開くんだけど、友達が少ないみたいで女の子のサクラを呼びたいんだっ
て。友達のふりをしてほしいみたいだよ。見栄えがいいように。」
『何それ。くだらない』
「いいじゃん、行こうよ。出会いの場だよ?御曹司ゴロゴロしてるんだよ?」
『別にあたし御曹司に興味ないし・・・』
「なーに言ってんの。皐月が貧乏人と付き合えるわけないでしょ?反対されて、ロミオとジュリエットみたいになりたい
の?それなりに家柄が良くないと、お父さんも反対するでしょ。」
『うーん、そうかなぁ。』
「今回はマナミの誘いだから、あの子の顔立てると思って、行こう?」
『うん、まぁ、しょうがないか。行くだけね。』
ショウコの誘いで、あたしはパーティに行く事になった。
身なりだけはきちんとして、友達のふりして挨拶もして。
あぁ、両親を安心させたかったわけね。
それなら、気持ちわからなくもないから。
協力してあげようと思う。
マナミとショウコと3人で会場にいれば、話しかけてくる人も多い。
どこの企業の娘か。
第一声がそれって、なんか違う。
確かにお父さんは大きな会社を経営してるけど、それはお父さんがすごいんであってあたしは何もしていない。
あたしはただの大学生。
お父さんに食べさせてもらって、大学に通わせてもらって、お小遣いもらって、だから今ここにいられるだけなのに。
「皐月ちゃん?具合でも悪いの?」
『え?』
「さっきから何も話さないから」
同じ大学生だという御曹司3人組。
どう見ても親の金ちらつかせて遊んでるような2人と、一緒にいるのが不思議な爽やかな見た目の人。
確か・・・
貝森、航だったかな。
『ごめんなさい。パーティって苦手で』
「俺もだよ。親の脛かじって生きてるような奴らばっかりでさ、反吐が出そうになる。」
『え・・・』
「あ、ごめん。つい本音が。そういう俺も、親の脛かじって生きてるんだけどね。いい大学行けているのも、こうやって
ブランド物着ていられるのも親の働いた金なんだし。」
顔に似合わず、思った事をズバズバ言う貝森さんに好感が持てた。
『フフッ』
「あ、笑う?そこ」
『あたしも同じこと思ってました。すごいのは私ではなく、父ですから。』
「そうそう。皐月ちゃんとは気が合いそうだね。連絡先聞いていい?」
『あ・・・はい』
これが、出逢いというものなのか。
挨拶の仕方も、食事のマナーも、所作も振る舞いも、先生が全部教えてくれた。
でも、恋愛の仕方だけは誰にも教えられていない・・・
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