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It is a tale like a storm.

司つくしメインです。

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空を見上げた時 4

翌朝、一般病棟というか、個室に移された。

なんだか広すぎる部屋にあたし1人は寂しくて。

自分が誰かもわからないから。

静寂の中で、孤独に包まれていた。

ガラッと開かれた扉から、男の人が入ってきた。

「おはよう、よく眠れた?」

声で、昨日の人だってわかる。

『おはようございます。こんな広すぎる部屋、あたしにはもったいないです』

「いいんだよ。気にしなくて。早速で悪いんだけど、話しても大丈夫かい?」

『はい。』

ボタンで背もたれを上げて、2人は傍らに置いてある椅子に座った。

「君を見かけたのは本当に偶然だったんだ。事故現場に遭遇して、救助を待つ君を見ていられなくて僕がここに運んでき
た。
僕は独身でね、ずっと家族が欲しいと思っていた。身寄りがない子でも、親がいる子でも、自分のインスピレーションで
出会いを求めていたんだ。そこで君と出会った。
僕と、養子縁組を組まないかい?」

『・・・は?』

「個人資産を相続してくれる人が欲しいんだ。会社は甥っ子に継がせる事が決まっているからいいんだけど、自分で買っ
たものは、自分の子供に継がせたい。おじさんの我儘だよ」

本当に我儘だ。

そんな我儘に、あたしを付き合わせようと?

「君が嫌なら、無理にとは言わないよ。治療費の心配もいらない。けど、自分の名前さえもわからない君が、退院して行
く所があるかい?財布も携帯も失くしたままじゃ、誰にも連絡はできないよね。」

『・・・』

意地悪だ。

あたしがうんと言うのを待っているかのような話し方。

『あの・・・ご結婚の予定とかはないんですか?結婚されれば、自分の子供だってできるかもしれないのに』

「僕はね、無精子症なんだ。子種を持っていないんだよ。だから、自分の子供は望めないんだ。」

『ごめんなさい、あたし無神経な事聞いちゃって・・・』

「いいんだよ。関係を持つ女性みんなに話している事だから。だから、僕は一生独身のまま。せっかく嫁いでくれても、
子供を望めないんじゃ可哀想だ。」

どこか寂しそうな顔をする。

・・・あたしが子供になれば、寂しい思いはしないの?

この人は救われる?

でも、あたしの本当の両親はどう思うんだろう。

記憶が戻れば、あたしはどうなる・・・?

グルグル頭の中で考えても、すぐに答えなんて見つからない。

「少し考えてみてくれる?」

『はい』

「何か必要なものがあれば、ここに電話して。斉藤が出るから。」

「秘書の斉藤です。」

メモ紙と携帯電話を頭床台に置いた。

『あの・・・お仕事って何されてるんですか?』

「あぁ、言ってなかったね。神戸で貿易商社を経営しているんだ。僕が・・・5代目?一昨日からこっちに出張で来てる
んだ。本当は明日帰る予定だったんだけど、伸ばすよ。君が心配だ」

『そんな、お仕事ならあたしの事なんて』

「いいや。もし縁組を断っても、出逢ったのは縁だ。君が完治するまで、お世話させてほしい。その腕じゃ、何もできないだろう?」

ギプスで固められた右腕。

食事でさえも左手でスプーンやフォークを使ってる。

未だトイレにさえも行けてない。

1人じゃ何もできないんだよね、今のあたし。

『じゃあ・・・お願いします。でも!治療費は必ずお返しします。どんな方法でも。』

「娘になってくれるなら、チャラにするんだけどね。」

『それは・・・』

「まぁ考えといて。そうだ、名前考えようか。何がいい?」

『あ、そっか。名前…』

ふと目に止まったカレンダー。

そうか。

今って五月か。

『じゃあ、皐月ってどうですか?丁度5月だし、確か花の名前にもあったんですよね。皐月って』

「いいんじゃないかな、素敵だ。じゃあ僕たちは仕事があるから行くよ。また夜にね、皐月」

『行って、らっしゃい・・・?』

「行ってきます」

あたしに手を振る逢坂さん。

頭を下げて出ていく斉藤さん。

その後ベッドの背もたれを戻し、考えた。

考えて、考えて、考えて。

今のあたしには何もない。

名前も、誕生日でさえも。

どこの誰だかわからない自分に、不安でいっぱいで。

あたしを助けてくれた逢坂さんは、手を差し伸べてくれている。

これをはねのけて生きていけるのかな。

どこに帰ればいいのかもわからない自分が、怪我が治って退院したらどうすればいいの?

警察に行って保護されれば、あたしが誰かわかる?

自分がわかったとしても、今はみんな知らない人なんだよね。

家族の名前でさえも、わからない。

そんなあたしには、逢坂さんは生きていく一筋の光なのかもしれない。




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