どんな扱いをされるかわかんなくて、強がっていたけど不安でいっぱいだった。
初体験だって、夢で描いていたような甘いものではなかった。
本能で生きてきた男は、本能であたしをわかってくれた。
側に置く事を許し、あたしだけを求めてくれた。
時々感じていた冷たさも、今はその影すらなくなった。
あたしを見つめる瞳は熱く、触れる手は優しさに溢れている。
耳に届く声はあたしの心をくすぐり、胸の奥を疼かせる。
見つめられる事、触れられる事、囁かれる事がこんなにも心地良く、あたしに熱を持たせる。
もっと、と声に出すのは恥ずかしいから、勇気を出して少しだけ見つめてみる。
それだけで司はわかってくれて、あたしの欲求は満たされるんだ。
言葉にしなければ伝わらないと思っていた、記憶のない司。
今はあたしの意志なんて無視してまでも、自らの感情も欲求もぶつけてくる。
それを受け入れて、時には突っぱねて、あたしたちは互いに守り守られ生きて行くんだと思う。
司のお母さんがめぐり合わせた、一度は途切れた運命。
もう2度と、離れないと約束したあの日。
真っ赤なバージンロードは、涙で霞んではっきりとは見えないけれど。
ドレスに包まれた大きなお腹も、蹴飛ばされる事にも愛しさを感じる。
「つくしを、よろしくお願いします」
「はい。お義父さん」
パパから司の手に渡り、誓いの言葉を述べた。
ベールを挙げて、溢れた一筋の涙を指で拭うと軽く触れるだけのキスをする。
目を開けて、目の前にある司の顔。
頬にそっと手を伸ばした。
すると、フワッと抱きあげられる。
『え、えぇ?』
そのまま招待客が外に出て行くのを待ち、あたしたちはチャペルを出た。
たくさんの拍手、ライスシャワーで祝福された。
『降ろしてよ』
「嫌だね」
そんな小さなやり取りも、今日はただただ嬉しいだけ。
ホテルに入る直前、司の頬を両手で挟みチュッと口づけた。
『今日だけ、だから・・・』
「足りねぇな」
近づく顔を首に腕を回し、今日は素直に受け入れた。
「初夜は・・・無理か」
『今日は少しだけ』
披露宴の為の控室に向かいながら、未だあたしは抱えられたまま。
『ねぇ、重くない?3人分だよ?』
「これから俺が背負う責任の重さだ。軽いくらいだな。両手で抱えきれないくらい増やすのが夢なんだよ。その為にはつくしにも頑張ってもらわないとな?」
『何人産ませる気よ・・・』
呆れながらも、大家族も悪くないなって思う。
きっとお金に困る事はないだろうし、司も良いパパになってくれそうだから。
「まずはここにいるのが無事に産まれてからだな」
控室に着いて、やっと降ろしてくれた。
「体調が悪かったら言えよ?いつでも中座できるようにしてある。俺一人で何とかなる所もあるから、遠慮なんてするなよ?」
あたしの手を握りながら、優しく話しかけてくる。
この人を選んで良かったと、心から思う。
出逢った頃からは想像もできないような優しさが、あたしの心をくすぐる。
司はよく言う、あたしだけ、と。
その言葉を信じて、いつまでも側にいる。
離れる時は、死ぬ時だけ。
『司、愛してるよ』
「あぁ、俺も」
誰もいなくなった控室。
今日何度目かわからない、キスをした。
遅くなって申し訳ないです。
次で終わりかなぁ。
双子ちゃんの出産で、最終話にしようと思います。
また、明日明後日の更新は休みます。
では、皆様良い週末を。
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