ほとんどがヒールの低いもので、あたしの為に用意されたものだと理解できる。
できるけど・・・ここまでしなくても。
すべてあたしのサイズ。
「好きなもの選べ。」
選べって言われて、このブランドは1足10万するものだって当たり前に売ってるようなとこなのに・・・。
元来貧乏症のあたしがおいそれと選べるわけがない。
『お前には選べねぇか』
少し馬鹿にしたような笑いをして、司が選び始めた。
「これ、これ、これ色違いで、これのブラウン、これストラップつけて、これ・・・」
軽く15足くらいは選んでるだろう。
『ちょっと、もういらないって!』
「あっても困る事はねぇだろ?ガキ産まれたって高いヒールなんて履けねぇんだからよ。」
そりゃそうだけど・・・
結局20足以上を選んで、自宅マンションに運んでもらう事になった。
見せられた請求書。
まだ慣れない金銭感覚に、体調関係なく目眩がしそうだった。
病院に行けば個室に通され、予約関係なしに診察される。
アメリカでは超音波は数回しかしないのに、司が手を回したお陰で毎回赤ちゃんの成長を映像で見る事が出来た。
そして、わかった事。
心音が2つ。
何の因果だろう。
あいつの遺伝子はよほどあたしと結びつきたかったのか。
会社に戻り、ソファーで隣同士に座る。
『あ、のね・・・双子、だったの』
「双子!?」
『うん。心臓2つあった』
「そうか、双子か。2人もこの中にいるのか」
あたしのお腹を愛しそうに撫でる大きな手。
『みんなビックリするだろうね。あたしも聞いてビックリしたもん』
「産まれたら騒がしくなるな。・・・日本帰るか?」
『えぇ?どうして?』
「つくしの妊娠がわかってから考えてたんだよ。あっちでも仕事はできる、むしろ帰らなきゃならない時期なんだ。元々は4年っていう話だったからな。俺たちが生まれ育った国で、お前の両親だっているだろ?そっちの方が安心して産めるんじゃないかって思ってる」
『あたしは・・・あんたがいればどこでもいい。こっちだって社長たちがいるんだし』
そう言えば、微笑んだ司に抱きしめられる。
「やっぱり帰ろう。披露宴も向こうでやる。」
人に聞いておきながら、結局は自分で決めてしまった司。
この強引さも、時には助けられる。
「タマが寂しがってるからな。ボケないように子守りさせとけ。こっちで買うもんも買いに行かないとな。お前はしばらく来れないだろう?体調のいい日に買い物に行こう。少し忙しくなるな。」
体を離し、顔を近づけようとする。
『こ、こ…職場っ!』
「いいんだよ、誰も見てねぇんだし」
『そういう問題?』
「そういう問題」
結局受け入れてしまう自分は、この男に相当惚れてるらしい。
触れるだけのキスに飽き足らず、舌を入れて来ようとする司の足をヒールで踏んだ。
痛さに驚き、顔を離した隙に腕を伸ばした。
『もう仕事の時間!真面目にやらないと帰るの遅くなる!』
ククッと笑い声が聞こえ、あたしの頭にキスを落とした司はデスクに戻って行った。
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