そう思うと、余計意識してしまう。
あたしがいなくなれば、司は今のままのポストで仕事ができる。
今の道明寺にとって、司はいなくてはならない存在。
司がいなくなった穴を、誰が埋められる?
努力という言葉とは無縁の世界で生きてきた男が、今の自分を成す為に必死になったのだ。
それを無駄にしたくはない。
あたしはやっぱり、司が好きだから。
側にいたいとも思うけど、背負ってるものを一緒に背負ってあげたいって思うけど。
・・・ごめんね。
意気地がなくて。
勇気がなくて。
あんたに言えたらどんなに楽か。
せめて、これだけは許してくれるかな。
もう、
ピルは飲まない。
あたしとの行為では避妊しない司。
後1ヶ月。
司の愛を受け止めようと思う。
普段通りに仕事をしながら、あたしが数カ月やってきた仕事のまとめをしていく。
これを見れば、あとは水嶋さんがいるから大丈夫。
『ふぅー』
「牧野さん、お疲れですか?」
『西田さん…』
表情は読み取れないけど、心配してくれているのはわかる。
『いえ、大丈夫です。』
顔に張り付けた笑顔、引きつってないかな?
あれから2週間も経って、刻一刻と迫る別れの時。
日本行きのチケットも手配済み。
あの雨の中、別れを告げた時の方が司の手を振りほどけた。
今はどうだろう。
あの少し高い体温であたしを抱きしめる喜びを知ってしまったから。
あたしの名前を呼んで、体中に触れて、精を注ぎこまれて。
愛する喜び、愛される喜び、肌で感じる熱、耳に感じる息遣い。
全てを手放すということは、あたしの心もなくす事。
司がいなければ、そんなのはどうでもいい。
目に涙が浮かぶのを堪える。
あと2週間あるじゃない。
ポジティブに考えよう。
再び背筋を伸ばし、パソコンに向かった。
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